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業務用エアコンは定期点検が必要!法令点検義務とフロン排出抑制法の内容を解説。

業務用エアコンの点検は、フロン排出抑制法により義務化されており、適切に管理しないと罰則が科せられる可能性があります。点検を怠ることで、法的な責任を問われるだけでなく、エアコンの性能低下や予期せぬ故障による業務への悪影響も考えられます。

本記事では、業務用エアコンの点検義務の詳細や対象機器、簡易点検と定期点検の違いについて解説します。また、フロンガス漏えいのリスクや違反時の罰則、適切な点検管理の方法についても詳しく説明し、法令遵守のために必要な対応を分かりやすく紹介します。

業務用エアコンの管理者として、適切な点検を実施し、環境保護と法令遵守を両立させるための対策を理解しておきましょう。

目次

業務用エアコンの定期点検が義務化されている理由

業務用エアコンの定期点検は、フロン排出抑制法により義務付けられており、事業者(管理者)は適切な管理を行う責任があります。この法律は、フロンガスの環境への影響を抑え、機器の適正な維持管理を促進することを目的としています。点検義務を果たさない場合、法令違反となるため、企業は計画的に点検を実施し、管理体制を整えることが求められます

法令に基づく点検義務の背景

フロン排出抑制法は、業務用エアコンや冷凍・冷蔵機器からのフロン漏えいを防ぎ、地球環境を守るために制定されました。フロンガスは、オゾン層を破壊するだけでなく、温室効果ガスとしても影響が大きいため、管理を徹底する必要があります

法令で求められる点検の主な目的

  • フロンガスの大気放出を防止し、環境負荷を軽減
  • 業務用エアコンの適正な維持管理を促進
  • 企業の環境責任(CSR)を強化し、持続可能な経営を推進

対象となる事業者

  • オフィスビルや商業施設を管理する企業
  • 飲食店・工場など業務用エアコンを使用する事業者
  • フロン類を使用する冷凍・冷蔵機器を運用する業者

事業者が点検を怠ると、フロンガスの漏えいが発生し、法令違反となるだけでなく、エアコンの性能低下や運用コストの増加にもつながります

企業が果たすべき責任と義務

フロン排出抑制法に基づき、業務用エアコンの管理者には以下の義務が課されています

  1. 簡易点検(3か月ごと)を実施し、記録を3年間保存
  2. 定期点検(3年ごと)を有資格者が実施
  3. フロン漏えいが発覚した場合は修理・報告を行う
  4. 適切な方法でフロンを回収し、違法な放出を防止

法令を遵守することは、企業の社会的責任(CSR)を果たすだけでなく、罰則を回避し、事業運営を安定させるためにも重要な対策です。

点検義務の対象となる業務用エアコンとは?

業務用エアコンの定期点検は、すべての空調機器が対象となるわけではなく、フロン排出抑制法で定められた基準を満たす機器に義務が発生します。点検義務の対象となる機器や基準を理解し、適切な管理を行うことが法令遵守の第一歩となります。

点検が必要な機器の種類と基準

フロン排出抑制法の点検義務が適用されるのは、フロン類を冷媒として使用する業務用空調機器や冷凍・冷蔵設備です。

空調機器(業務用エアコン)

  • 天井埋め込み型エアコン
  • パッケージエアコン
  • ビル用マルチエアコン

冷凍・冷蔵機器

  • 冷凍ショーケース
  • 冷蔵倉庫用機器
  • 製氷機

これらの機器のうち、定格出力7.5kW以上のものが点検義務の対象となります。

定格出力7.5kW以上の空調機器が対象となる理由

フロン排出抑制法では、冷媒としてフロンを使用する業務用エアコンのうち、定格出力が5kW以上の機器に対し、定期点検が義務付けられています

フロンガスの使用量が多い

出力が大きいエアコンほどフロン類の充填量が多く、漏えいした際の環境への影響が大きいため、定期的な点検が求められる

業務用機器は長時間稼働する

業務用エアコンは家庭用と比べて稼働時間が長く、部品の摩耗や劣化によるフロン漏えいのリスクが高い

設備管理の責任が問われる

オフィスビルや商業施設などの管理者は、設備の適切な運用と法令順守が求められるため、点検の実施と記録の保存が義務付けられている

冷凍・冷蔵機器と空調設備の点検義務の違い

業務用エアコンと冷凍・冷蔵機器は、どちらもフロン類を使用していますが、点検の方法や義務の範囲が異なります

機器の種類

点検義務の対象

主な点検項目

業務用エアコン

7.5kW以上の空調設備

フロンガスの漏えい、配管の劣化、冷媒圧力の異常

冷凍・冷蔵機器

冷凍ショーケース、冷蔵倉庫など

冷媒の充填量、コンプレッサーの状態、ドレン配管の詰まり

業務用エアコンの管理者は、空調機器だけでなく、冷凍・冷蔵機器も対象となる場合があるため、所有する機器の確認が重要です。

適切な機器管理を行うことで、フロン漏えいのリスクを低減し、法令順守と業務の安定運用を両立できます。

定期点検の種類と実施方法|義務を正しく理解する

業務用エアコンの定期点検には、簡易点検と定期点検の2種類があり、それぞれ実施頻度や内容が異なります。点検義務を正しく理解し、適切に管理することで、フロンガスの漏えいを防ぎ、法令違反を回避することが可能です。

簡易点検(四半期ごとに実施)

簡易点検は、3か月に1回以上実施することが義務付けられており、機器の管理者がその技術等に応じた範囲で自ら行うことが可能です。特別な資格は必要ありませんが、点検結果を記録し、適切に保存することが求められます

点検対象と確認すべきポイント

簡易点検では、主に目視や簡単な動作確認を行い、異常がないかをチェックします。

  • 冷暖房の効きが悪くないか(異常な温度変化がないか)
  • 運転時に異音や異臭が発生していないか
  • 室外機周辺にホコリやゴミが溜まっていないか
  • 配管に結露や霜付きがないか
  • エラー表示が出ていないか

点検の結果、異常が見つかった場合は早急に対応し、必要に応じて専門業者に修理を依頼することが重要です。

点検記録の保存と報告義務

簡易点検の結果は、点検実施日・点検内容・異常の有無を記録し、機器を廃棄して3年間保存する義務があります。また、フロンガスの漏えいが発覚した場合は、所定の手続きに従い、必要に応じて事業所管大臣へ報告する必要があります。

定期点検(3年ごとに実施)

定期点検は、有資格者(冷媒フロン類取扱技術者など)が実施する点検であり、3年に1回以上の実施が義務付けられています。この点検では、簡易点検では発見できないフロンガスの漏えいを検出し、設備の安全性を確認します。

有資格者による点検が必要な理由

  • 目視では発見できないフロンガスの漏えいを専用機器で測定
  • 配管の接続部やバルブなどの点検を行い、微細な異常も発見可能
  • 冷媒の圧力測定やコンプレッサーの動作確認を実施し、機器の状態を診断

点検で行われる主な作業内容

定期点検では、以下の点検項目をチェックし、機器の異常がないかを判断します。

  • フロンガスの漏えい有無の確認(専用ガス検知器を使用)
  • 圧縮機や熱交換器の動作状態のチェック
  • 配管接続部・バルブの締まり具合を確認
  • 冷媒圧力の測定と異常値の確認
  • 排水ドレンの詰まりや水漏れのチェック

点検結果の記録と保存義務

定期点検の結果も、点検実施日・点検内容・異常の有無を記録し、3年間保存することが義務付けられています。万が一フロン漏えいが発覚した場合、速やかに修理・充填を行い、必要に応じて事業所管大臣へ報告する必要があります。

簡易点検と定期点検を適切に実施することで、フロン漏えいを未然に防ぎ、環境負荷の軽減と業務用エアコンの長期運用が可能になります。

フロン漏えいのリスクと対応方法

フロン漏えいは、業務用エアコンの性能低下や環境問題を引き起こし、事業運営にも悪影響を及ぼします。漏えいを放置すると、法令違反のリスクが高まるだけでなく、エアコンの運転コストが増大し、修理費用がかさむこともあります。適切な管理を行い、早期に対応することが重要です。

フロン漏えいが発生した場合の具体的な影響

フロン漏えいが起こると、エアコンの冷媒不足による性能低下や、環境への悪影響が発生します。

エアコンの性能低下

  • 冷暖房の効きが悪くなり、設定温度に達するまでの時間が長くなる
  • 冷媒不足により、コンプレッサーの負荷が増加し、機器の寿命が短くなる

電気代の増加

  • フロンが不足すると、エアコンが無駄にエネルギーを消費し、電気代が上昇
  • 冷媒が適正量に満たない状態で運転を続けると、電気代が通常の1.5倍以上になることも

法令違反による罰則適用

  • 一定量以上のフロン漏えいが発覚し、適切な対応を怠ると、10万円以下の罰金が科される
  • 点検義務違反が認定された場合、行政指導や業務停止命令が下る可能性がある

フロン漏えいを未然に防ぐことが、環境負荷を減らし、エアコンの運用コストを抑えるための重要な対策になります。

フロン漏えいの早期発見と対応手順

フロン漏えいを早期に発見し、適切に対応することで、エアコンの故障や罰則適用を回避できます

フロン漏えいの兆候をチェック

  • 冷暖房の効きが悪い(設定温度に到達しにくい)
  • エアコンの運転音が大きくなる
  • 冷媒配管に結露や霜付きが見られる

フロン漏えいが発覚した場合の対応手順

専門業者に診断を依頼

  • フロンガスの漏えい検査を実施し、異常がないか確認

漏えい箇所の特定と修理

  • 配管の接続部やバルブを点検し、必要に応じて修理を実施

フロンガスの適正充填と報告

  • 修理後、適正量のフロンを補充し、記録を保存
  • 一定量以上の漏えいがあった場合は、環境省や自治体へ報告

漏えいが発覚した際の対応が遅れると、エアコンの性能低下だけでなく、企業の信頼性にも悪影響を及ぼす可能性があるため、速やかな修理と適切な報告が必要です。

フロン漏えいのリスクを最小限に抑え、業務用エアコンを安全に運用するために、定期点検の実施と適切な管理体制の構築が重要になります。

フロン排出抑制法違反による罰則とリスク

業務用エアコンの点検を怠ると、フロン排出抑制法違反となり、罰則の対象となるだけでなく、事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。適切な管理を行わなければ、行政指導や罰金が科せられるだけでなく、企業の信用失墜にもつながります。ここでは、フロン排出抑制法違反による罰則と、事業リスクについて詳しく解説します。

定期点検を怠ると科せられる罰則とは?

フロン排出抑制法では、業務用エアコンの適切な点検と管理が義務付けられており、違反した場合には罰則が科されます

点検未実施の罰則

  • 法令で定められた簡易点検や定期点検を行わなかった場合、行政指導や勧告の対象となる
  • 勧告を無視し、改善命令に従わなかった場合、50万円以下の罰金が科される可能性がある

フロン漏えいの未報告による罰則

  • 一定量以上のフロン漏えいが発覚し、適切な報告を怠った場合、50万円以下の罰金が科され
  • 企業の環境管理責任が問われ、取引先や顧客の信用を損なうリスクがある

虚偽報告・記録未保存の罰則

  • 点検記録を3年間保存する義務があるが、未保存の場合、行政指導や罰則の対象となる
  • 虚偽の記録を提出すると、より重い罰則が適用される可能性がある

点検記録の未保存・虚偽報告が企業に与える影響

業務用エアコンの点検義務違反は、単なる罰則だけでなく、企業の信頼低下や事業継続のリスクを引き起こします。

企業の信頼性低下

  • 法令違反が明るみに出ると、企業の環境意識の低さが問題視され、取引先や顧客からの信用を失う
  • 環境対策を重視する企業との取引に影響が出る可能性がある

行政処分や業務停止の可能性

  • 点検未実施や報告義務違反が続くと、業務停止命令が下されるリスクがある
  • 設備管理不備による漏えいが発覚した場合、行政指導が強化される可能性が高い

環境問題への影響と社会的責任

  • フロン漏えいは地球温暖化を加速させる要因となるため、環境保護の観点からも厳しい管理が求められる
  • CSR(企業の社会的責任)の観点から、環境対策に積極的に取り組む姿勢が企業価値の向上につながる

フロン排出抑制法を遵守し、適切な点検と記録管理を実施することで、罰則の回避だけでなく、企業の信頼性向上にもつながるのです。

適切な点検管理のための実施フロー

業務用エアコンの定期点検を適切に管理するためには、計画的なスケジュールの作成や、専門業者との連携が不可欠です。点検漏れや記録不備を防ぐことで、フロン排出抑制法の遵守とエアコンの安定運用を両立できます。ここでは、法令に準拠した点検管理の実施フローについて解説します。

点検スケジュールの作成と管理のポイント

業務用エアコンの定期点検は、簡易点検(3か月ごと)と定期点検(3年ごと)を組み合わせて計画的に実施することが重要です。

点検スケジュールの基本

簡易点検(3か月ごと)

  • 設備管理担当者が四半期ごとに点検を実施
  • フィルター清掃、外観の異常確認、運転状況のチェック

定期点検(3年ごと)

  • 有資格者が機器のフロン漏えいの詳細な点検を実施
  • 冷媒圧力の測定、配管・バルブの確認、異常箇所の診断

点検管理のポイント

  • 社内の設備管理担当者を決め、責任者を明確にする
  • 点検実施日と次回点検予定を記録し、管理台帳を作成する
  • 業者への点検依頼スケジュールを事前に決め、忘れずに実施する

適切なスケジュール管理を行うことで、法令順守だけでなく、エアコンの長期運用とコスト削減にもつながります

専門業者の選び方と委託時の注意点

定期点検は、冷媒フロン類取扱技術者の資格を持つ専門業者に依頼する必要があります。適切な業者を選び、点検を確実に実施することが大切です。

専門業者選びのポイント

  • 業務用エアコンの定期点検実績が豊富な業者を選ぶ
  • フロン回収や修理まで一貫して対応できるかを確認する
  • 点検内容と費用を事前に見積もりし、契約内容を明確にする

委託時の注意点

  • 点検結果の記録を必ず受け取り、3年間保存する
  • 点検のタイミングと実施内容を事前に確認し、適切に管理する
  • 万が一のフロン漏えい時に、迅速に対応できる体制を整える
  •  

適切な業者を選び、計画的に点検を実施することで、法令違反を防ぎながらエアコンの最適な運用を維持することが可能です。

業務用エアコンの定期点検についてよくある質問

業務用エアコンの点検記録はどのように保存すればよいですか?

業務用エアコンの点検記録は、紙の書類またはデジタルデータのいずれかで3年間保存することが義務付けられています。簡易点検・定期点検の内容、実施日、点検担当者の情報を明確に記載し、社内の管理ファイルやクラウドストレージに保存すると安全です。また、フロン漏えいが発覚した場合は、修理・補充の記録も保管し、必要に応じて報告できるよう準備しておきましょう

業務用エアコンのフロンガス充填を依頼する際の注意点はありますか?

フロンガスの充填は、有資格者(第一種または第二種冷媒フロン類取扱技術者)のいる業者に依頼することが義務付けられています。依頼する際は、適正な冷媒量の充填が行われるかを確認し、作業内容が記録として残る業者を選ぶことが重要です。また、フロン回収業者が適切な処理を行うかもチェックし、不適切な充填や放出がないよう注意が必要です。

業務用エアコンの点検義務はビルの管理会社が対応するべきですか?

業務用エアコンの点検義務は、機器の管理者が負うため、ビルの所有者や管理会社、テナントなど契約内容によって責任の所在が異なります。ビルの管理会社が一括で対応するケースもあれば、テナントが個別に点検を実施する契約になっている場合もあるため、契約書を確認し、適切な管理者が点検を実施することが重要です。点検の責任範囲を明確にし、役割分担を決めておくことで、法令違反のリスクを回避できます

まとめ

業務用エアコンの定期点検は、フロン排出抑制法により義務付けられており、適切な管理を行わないと罰則の対象となる可能性があります。点検を怠ると、フロン漏えいによる環境負荷の増加やエアコンの性能低下、企業の信用低下といったリスクが発生します。

適切な点検管理を実施するためには、3か月ごとの簡易点検と3年ごとの定期点検を確実に行い、記録を3年間保存することが重要です。また、フロン漏えいが発覚した場合は、速やかに修理・報告を行い、法令違反を防ぐことが求められます

業務用エアコンの管理体制を整え、法令を遵守しながら、環境負荷を軽減し、長期的な設備運用の最適化を実現しましょう

ABOUT ME
椋木 数馬
【監修者】:椋木 数馬 【所属】:株式会社アイドットコム | 営業課長 【経歴】:ビルメンテナンス業に従事したのち、空調コンシェルジュとして活躍 【資格】:空調コンシェルジュ 【プロフィール文】: 長年にわたりテナントビルや商業施設の空調部門に携わり、多くの施設が抱える空調に関する課題を的確に解決。複雑な設備のトラブルシューティングから省エネ対策の提案まで、多岐にわたる実績をもつ。2018年から空調機器販売のアイドットコムに所属し、顧客ごとのニーズに合わせた最適なソリューションを提案する空調コンシェルジュとして活躍中。多くのお客様から高い評価を得ています。 好きな食べ物はアサイーボウル。